寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「………………ねぇ、茉莉ちゃんなのかしら?」
怖いくらい、真剣な顔。
広角は上がっているのに、瞳が全く笑っていないお母さんに、私は首を横に振っていた。
………………本能的に。
「………っっ、ううん、莉茉じゃないの?」
その時。
私は、大きな嘘を付いた。
生涯、消えぬ罪を背負って。
分かって、いたの。
お母さんの、その狂気の矛先が全部、私ではない、誰に向かうかって事は。
………………分かっていたのに。