寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「………莉、茉…。」
「うん?」
「………、俺、は。」
初めてだ。
こんなにも、人で揺らいだのは。
「っ、俺は、お前を失いたくねぇ。」
身も凍るような、あの何かを失う恐怖。
ちらつくのは、地に染まった、その姿。
高崎家に生まれ落ちた瞬間から、闇の全てを見てきた俺に、何一つ怖いものなどなかった。
ーーーーだけど。
「っっ、莉茉っ。」
強く莉茉を抱き締める。
出会ってしまった。
掛け替えのない、唯一無二の女に。
莉茉、
お前は、俺自身よりも大切な存在なんだ。
誰よりも、
何よりも、愛おしい。