寵愛の姫 Ⅳ
「じゃあ、無駄じゃなかったのかな?」
「うん?」
「あの両親に愛されなかったから、私は暁に出会えて幸せになれるんだもの。」
莉茉の瞳が、闇に染まる。
「“どうでも良い”あの両親に、初めて少しは感謝が出来そう。」
「ふっ、そうか。」
増悪を孕んだ莉茉に、俺の口角が上がった。
それで、良い。
莉茉の感心を失った、あの両親に嘲笑が浮かぶ。
「莉茉?」
「ん?」
「お前の中には、俺だけがいれば良い。」
莉茉の心の全ては、俺にだけ向けば良いのだから。
なぁ、そうだろ?
ーーーー俺だけの、莉茉。
「うん。」
うっとりと、顔を緩ませる莉茉を引き寄せた。