寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
あの日。
あの時。
ーーーーあの、瞬間。
もしも、貴方に出会えていなければ、私は自分自身を捨てていた。
未練なく。
躊躇もなく、簡単に。
私を繋ぎ止めるものなんて、この世界に何一つ残っていなかったから。
きっと、間違いなく。
「ーーーお前以外を愛した時は、莉茉が俺を殺せ。」
漆黒を身に纏った暁は、真っ直ぐな眼差しを向け、そんな死んだような私の心を掬い上げた。
惜しみ無い、愛情を差し出して。
嬉かったよ。
胸が震えるくらいに。
込み上げる、歓喜と、幸福感。