寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「高崎様、お待ちしておりました。」
動揺する周囲の中から、1人の男性が私達の方へと歩み寄って来る。
そして、完璧な所作で頭を下げた彼の胸元には、シンプルに品良く輝くバッチ。
そこには、役職名が表示されていて。
「ーーー総支配人?」
どうやら、このホテルの中で一番に偉い人らしい。
「はい、香川と申します。」
ぽつりと呟いた私に、総支配人の香川さんは、にこやかに微笑んだ。
「………、えっと、」
暁を窺うように、見上げる。
「莉茉だ。」
その意味を汲み取ってくれた暁が、香川さんへと、私の名前を告げた。
もちろん、ちゃんと回りに聞こえないぐらいの声量で。