寵愛の姫 Ⅳ
「………ねぇ、暁?」
客が途切れた瞬間、莉茉が俺の袖口を引く。
「うん?」
「あの、化粧室に行って来ても良いかな?」
莉茉が頬を染める。
「化粧室?」
「うん。」
「分かった。」
莉茉の言葉に、高崎の組員に目で合図を出してから、俺は頷く。
「なら、行って来い。」
「ありがとう。」
にっこりと微笑んだ莉茉が背を向け、扉の方へと歩き出す。
「若頭。」
その後ろ姿を横目に、近付く知り合いに意識を切り替えた。