寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「………。」
どうしよう。
出口は、1つしかない。
なら、このままこの場にいれば、憤慨している声の主に鉢合わせするのは、明白で。
私が気まずいなって思った時には、遅かった。
「………あっ、」
化粧室に入って来た女性の1人が、中にいた私の存在に気が付く。
ばっちりと、絡み合う視線。
次の瞬間。
全員の視線が、私に集まった。
少しの沈黙の後。
「あら、高崎組の若頭に溺愛されている、”お姫様“じゃない。」
揶揄するように笑う、きつい顔付きの女性に鋭い目を向けられる。
「っっ、」
息を飲む。
これは、敵意?
………いや、増悪なのかも知れない。
私が、慣れ親しんだもの。
でも、なぜ?
分かるのは、私が彼女に嫌われているらしいと言う事だけだった。