寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
このまま関わらず、通り過ぎたかった。
………なのに。
「っ、待ちなさいよ!」
横を通り抜けようとした私の腕を、容子と呼ばれた彼女によって、掴まれる。
「………すみませんが、暁が待っていますので。」
これ以上、高崎の組員さんや、お父さん達を待たせるのは不味い。
そう思い、暁の名前を出したのが悪かったんだろう。
………理解した時には、遅かった。
「っっ、」
暁の名前に、あからさまに反応した目の前の彼女顔が、途端に怒りに染まる。
「………、あ、の…。」
声が震えた。
怖い。
やっぱり、彼女はお母さん達に似ているんだ。