寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「………、」
一瞬、ぴくりと朔くんの身体が跳ねる。
「………朔、くん?」
うっすらと閉じていた目を開けて、無言の朔くんを、そっと窺う。
「………………チッ、邪魔しやがって。」
「ふふ、朔くんったら。」
不機嫌な朔くんに、笑ってしまった。
「朔くん、電話じゃない?」
「ああ。」
「出ないの?」
「………はぁ、だって、せっかく神無といるのにさ。」
唇を尖らせた朔くんが、溜め息を吐き出す。
それでも、不意に鳴り始めた自分の帯電話を、私を抱き締めたまま、手に取る。
「ーーーーえ?」
画面を覗いた朔くんが、目を見開いた。