寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「朔くん、早く出ないと。」
「………、うん。」
慌てて促せば、朔くんは渋々、自分の携帯電話を、耳に押し当てる。
「ーーーーーはい?」
通話を始めた朔くんの腕の中で、横目を滑らせて、私は窓の外を眺めた。
寂しくて。
孤独に溢れていた、あの頃。
………………でも。
今は、朔くんが私の側にいてくれるから、こんなにも幸せを感じられる。
あの頃の、痛みや苦しみ、孤独があったからこそ、気付く事が出来た。
………そう、私は思ってる。
全てにおいて、意味のない事など、ないんだ。