寵愛の姫 Ⅳ 【完結】
「………神無。」
「うん?」
「………っっ、莉茉さんが刺されて、病院に運ばれたらしい。」
胸が苦しい。
………っっ、兄貴。
窓の外では、
相変わらずの、激しいどしゃ降りの雨。
この先の未来を指し示しているかのように、俺達に暗い雨雲を運んで来た。
「………………え?」
「………。」
俺の腕の中で、身体を震わせた神無の肩から、自分の顔を持ち上げる。
「………………っっ、う、そ…。」
「………。」
「………ねぇ、嘘でしょう?」
俺にすがり付いた神無が、顔を悲痛に歪ませて、その目に涙を溜めた。