寵愛の姫 Ⅳ  【完結】



「………。」



流れ行く血を見つめる。






擦っても、


濯いでも、こびりついてなかなか取れない。







自分の手に付いた莉茉の血を無理矢理に洗い流す度に、俺の中が冷え込み、何かが失われていく気がした。



「………………殺してやる。」



ふつふと沸き上がる激情。






直ぐにでも、その息の根を止めてやりたくなる。








あの妹を生かしておいたのか、そもそもの間違いだったんだ。





判断を見誤った、俺のミス。







沸き上がるあの女に対する殺意の衝動を押さえながら、紙袋の中から新しい服を取り出した。
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