お調子令嬢は王子様の視線を奪う

第9話

 内心スカッとしていた私に、お嬢様が小声で話しかけてきた。

「ロモラッドさんはこの方とお知り合いですの?」

「ああ、元婚約者ですよ。昨日の朝、破棄されちゃいましてねぇ。ま、こっちとしてはこんなアホと縁が切れて万々歳だったんですが。……まさかお嬢様に粉を掛けていたとはねぇ」

 ここ数ヶ月、いつにも増してこの男の態度が調子に乗っていたのも、お嬢様に粉を掛けていたからか。勝手にお嬢様が自分に惚れ込んでいると勘違いして私と正式に婚約を破棄したって訳ね。

 公爵家と言えば王室とも強い繋がりがある家柄な訳で、いくら伯爵令息といって相手にされる訳が無いでしょうに。この男の自信過剰と言うか、自分の力に溺れる性格は昔から変わらないらしい。

「よくも……」

「あん? 何、聞こえないんだけど?」

「……よくも俺の婚約を邪魔してくれたなぁあ!!」

「いや自滅でしょ? アンタってばその無条件で誰からも好かれると思ってるところ治しなよ。そんなんだから男友達だって一人もいないんじゃん」

 そう、この男には友達が一人もいない。よって来るのは伯爵の家名に釣られた人間だけで、個人的に親しい人間など居ないのだ。何度言っても性格治さないんだから仕方ないね。
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