お調子令嬢は王子様の視線を奪う
 何? 折角、うまいことまとまりかけたのに。この男はまた蒸し返そうって言うのか。いい加減にしないと強制的につまみ出されるっての。

「ドゥローさん、これ以上は看過出来ません。……誰か! この方を外までお連れなさい!」

「な!? 離せ! 俺は伯爵令息だぞ!!」

 あ~あ。私が穏便に終わらせて、後はアンタが素直に帰るだけで済んだものを。

「ええい!! ならば明日、俺の屋敷に来いルーゼンス! そこで俺との結婚について改めて話合おうじゃないか! ……がっ! 痛い!? 離せ、どこを掴んでる?! 離せぇぇ!!!」

 アホがアホみたいな事喚き散らしながら、屈強な黒服達に連れてかれてしまった。

「まったく、困った人ですわ。……ロモラッドさん大丈夫でしたか?」

「私は何も。それよりもお嬢様こそ、あんな男の言う事なんて忘れて、今日は親戚一同とパァーっと楽しんで……」

「私、決めましたの。明日、彼の屋敷に行ってハッキリ婚約の意思が無い事を伝えますわ!」

 え、何のスイッチが入ったの? ちょっとついていけないかな~って。

「折角ですし、ロモラッドさんも一緒に来て下さらないかしら? わたくしはもう逃げません。貴女も彼との因縁を終わらせましょう!」

 私の場合、もう終わってるようなもんなんだけど……。
 一度決めたお嬢様は頑なで、どうにもこっちの言い分を聞きそうに無いねこれ。

 その後はつつがなくパーティーが進んで行って終わりを迎えた。結局私のマンドリンと扇子が戻ってきたのはパーティーが終わった後だったよ~ん。


「やはり、彼女は面白いな。心から充実出来た。……しかし、ドゥローと言ったか? 流石に目に余るね。少し考えなくては」
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