お調子令嬢は王子様の視線を奪う
「へっへっへ、二人してそんな褒めなくても。……私の人生というやつはですね、グダグダした平穏とちょぴっとのスパイスがあれば満足なんですよ。それで十分です。それ以上は、流石に多すぎです」

「貴女の言うグダグダした平穏とは、周りを巻き込んで騒ぐ事ですの? やっぱりズレてますわ」

「えへへ~」

 さてこれからどうしようか?

 と思ったけど、王子様の顔をチラリと見たらどこか……なんとな~くだけど寂しそうに見えなくもないような、やっぱりそうでもないような。
 う~ん……よし!

「そういえばラピさん、昨日の約束覚えてますかい?」

「ロモラッドさん、貴女はまた殿下に対して失礼な!」

「ほらほら落ち着いてルーズ。……もちろん覚えてるさ、次会ったら僕とお茶してくれるんだろう? 僕の奢りで」

「へへ、そいじゃま! その約束を果たしてもらいましょうかね?」

 私はラピさんの腕に自分の腕を絡ませる。
 こういう事は女性からやるものだ、なんて母ちゃん言ってた気がする。理由を聞いたら、世の中というものは思った以上にシャイなボーイが多いらしいんで。

「ラピさんらしいエスコート、期待しちゃってよござんしょ?」

「……! ああ、初めての経験だが任せて欲しい」

 王子様は一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐにいつも通りの爽やかな笑顔に戻っていた。

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