お調子令嬢は王子様の視線を奪う
 まさか負けると思ってなかったルーゼンスお嬢様は、自分の従者の名前を叫びながら倒れたイケメンさんの傍まで駆け寄る。そしてその肩を揺すりながら、泣きそうな声で呼びかけるが返事はない。

「あ、貴女!! これで勝ったと思わないことね、覚えてなさい!!!」

 お嬢様はイケメンさんを魔法で宙に浮かせながら、会場をスタコラと出て行った。

 ふぅ、勝負の後っていうのはいつも虚しいもんだぜ。

「というわけで私の劇的な勝利で終わりました!! みんなテンション上がってるゥ?!」

「「「イェエエエイ!!!」」」

 今の勝負のおかげで会場のボルテージも絶好調。
 我々清い学生一同は、例年通り朝まで騒ぎ立て……教師連中にお叱りを受けるのだった。


「お前らなぁ、学生のうちから羽目を外すことばっかりやってたら禄な大人にならんぞ!?」

「そうは言っても先生さ、私たちはもうすでにロクなもんじゃないのだから……」

「その開き直りをどうにかしろって言ってんだよ!」

 正座で説教を受ける私達。

 その裏でとある令息の思惑が動いていたなど、この時は知る由も無かったのだ。
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