顔出しNG!歌うたいな彼のぬくもりは甘くとろける
 古賀雪也(こがゆきや)さんは、私より二歳年上でもうすぐ二十二歳になるバイト先の先輩だ。
 誕生日はクリスマスイブとのこと。

 「誕生日とクリスマスがかぶるって損だと思わない?」

 クリスマスソングが聞こえ始める頃。
 バイト先であるゲームセンターのバックヤードで、仕事上りに古賀さんは、誕生日のことも含めて自分のことを今までになく私に話してくれた。
 
 整った顔立ちだけでも人目を引くのに、きれいに染まった明るい髪色にはウェーブが軽くかかり、耳にはいくつかのピアス、制服を着ていてもお洒落で目立つ。
 
 『古賀くんがバイトに入ってから彼を見に来る女性客もいる』

 と、他のバイト仲間が口々に話すくらい。
 店内ですれ違った古賀さんを見て二度見する女性客を私も見たことがあるから確かかもしれない。
 
 仕事が出来て、優しくて、でもいつもは口数が多いわけでもないからプライベートのことはあまりよく知らなかった。
 本人からはフリーターだと聞いていたけれど、本当は音楽活動に重点を置いているそうだ。
 
「もしかして、顔出ししてないだけで有名だったりしますか?」

 古賀さんが打ち明けてくれた音楽活動の話を聞いてなんとなくそう訊いてみると「どうかな?」と、言葉通りどちらかわからない絶妙な回答とともに微笑まれた。
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