顔出しNG!歌うたいな彼のぬくもりは甘くとろける
「はは!それ、古賀くんも気にしてた。夏南ちゃん元気かなって」
「え……」
「元気にしてるよ。でも古賀くん、他の仕事が忙しいみたいで。あまりうちには入れない上に、新しい子の指導頼んだりしてたから。そんなに夏南ちゃんと会ってなかったかなぁ」
「……元気なら、良かったです」

 ホッとしたのと、古賀さんが気にかけてくれてたことが嬉しくて、ドキドキ高鳴る胸をおさえながらバックヤードを出て店内を回る。
 仕事をしていても楽しいくらいには自分が浮かれているのがわかって、まるで古賀さんに恋をしているようだとふと気づいた。
 
 次に会えたら、どんな顔をすればいいのだろうか。
 会いたいけれど『会いたかったです』は重い気がするし、意識しすぎて素っ気なくなるのも違うと思う。

『恋してもいいのか迷ってる』

 最後に会った日。
 古賀さんが呟いた言葉はどういった意味を持つのかわからないけれど、あのときの言葉が自分の心の声になっていくような気がした。

「夏南ちゃん」

 クレーンゲームのガラスを拭いていると背後から声をかけられ、振り返れば古賀さんが立っていて「お疲れ様」と言って微笑んだ。

「お、お疲れ様です!え……古賀さん、今日出勤ですか?」
「いや……制作行き詰まりすぎて。ジンクスにあやかろうと夏南ちゃんに会いに」
「あ……」
「仕事上がったら、予定ある?」
「特には……」
「じゃあ、ごはん付き合ってもらえませんか?もちろん、奢ります」
「は、はい!」
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop