顔出しNG!歌うたいな彼のぬくもりは甘くとろける
「……どんな歌ですか?」
「失恋ソング。……実体験みたいな」
「え……古賀さん、失恋するんですか!?」
「ふつうにするよ。でも失恋してズタズタになって作った歌が俺の代表作みたいになりはじめると……新しく恋していいのかもわからなくなるし、誰かを想って曲をつくることも怖くなって、息抜きにはじめたのが今のバイト」
「……じゃあ、もしかしてそろそろバイトは辞めちゃうんですか?」
「寂しい?」

 素直に一度頷いて、そういえば店長も古賀さんは他の仕事が忙しいと言っていたことをふと思い出していた。
 ならば息抜きが完了して、失恋から立ち直って、新しい恋も見つけられたのかもしれない。
 喜ぶべきところなのに、せっかく今までよりもちょっとだけ仲良くなったと思ったらお別れだなんて、寂しい以外に言葉があるだろうか。

「俺も夏南ちゃんに会えなくなるのは寂しい」
「そういうことは好きでもない子に言っちゃダメです」

 お説教みたいに釘を刺すと、古賀さんは笑って「大丈夫」と言った。
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