2年前、離婚したはずの夫から、花束と手紙が届きました
 離れに来て2か月後、マレーネが突撃してきた。タレ目に涙をいっぱいためて、両手で顔をおおって泣いている。迷惑だな。

「うっうっ、お、おおがあざまが、わだじを、ふできなむずめだというんでずうっ!」
「ああ、義母様とうまくいかないんですね」
「ううううっ、うううぅ〜!」
「義母様はハーブティーとお菓子を出せばイチコロですよ」
「えっ」

 マレーネが涙をひっこめた。迷惑がちょっと解消した。

「こちらをどうぞ。ガーデンパーティーに使っていたレシピです。ワインゼリーを好まれていたので、義母さまを攻略するのに、ご利用ください」

 マレーネにレシピを渡すと、また泣きだしてしまった。

「ううううっ、ピアざまあああっ わたしにこんなに、やざじぐしてくだざるなんてええっ わたし、ピアさまを、誤解していまじだあああっ」
「愛があれば試練は乗り越えられます。がんばってください」

 感情がともなわないエールを送って、マレーネを本邸に返した。

 離婚できる日まで残り一週間。二度と見たくないと思っていたロジェリオが突撃してきた。

 げげっ、と顔をしかめると、ロジェリオは私の姿をじっと見つめた。はじめて会った時は、そこそこ美男子と思ったけど、今はへのへのもへじに見える。どうしてイケメンだと思ったのか。目が腐っていたんだな。

「……何かご用ですか?」

 距離を保ちながら尋ねると、ロジェリオはふっと芝居がかった笑みをはいた。

「……つれないね。ぼくたちは夫婦じゃないか?」
「一週間後には、赤の他人ですわ」
「今からでもやり直せるだろう?」
「は?」

 ロジェリオは唇を舌でなめながら、私に近づく。様子がおかしい。視線が妙に熱っぽい。気持ち悪い。

「ねえ、ピア。今のきみなら、ぼくは抱けるよ? ぼくたち、初夜からやり直そう?」
「初夜は二度と取り戻せない大切な一夜ですしっ! 時間は巻き戻せませんからっ!」

 ロジェリオに腕を掴まれ、肌があわ立つ。本当に一体、なんなのっ! なんで、今さらっ!
 頭が混乱して、涙がでそうになったとき。

「ひどいわあああ! ピアさまああああ!」

 ドスドスと足音をたてながら、ふくよかな救世主が現れた。

 ――え? 誰?
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