娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

2.望んでいるのは夢か希望か、両方か

「わ、わざわざ値段設定も高いNo.1を指名して、寝たいだけってこと!?」
「いいだろ別にっ!俺は寝不足なんだよ!!」

叫ぶように聞いた私に叫ぶように答える彼。
そこでやっと、そもそもな疑問にたどり着く。

「····と、いうか、全然寝てないの?」
確かに英雄である彼はどの戦場にも呼ばれる。
もしかして休む時間もなく戦わされているのでは、と少し焦る私だったが。

「寝てないんじゃない。“寝れない”んだ」
「寝れ、ない····?」
「寝ようと思っても俺が···、」

はぁ、と小さいため息を吐いて少し苦しそうに言葉を切った彼は、ゆっくりと溢すように言葉を続ける。

「俺が殺した奴らが殺しに来るんだ。目の前の敵を斬らなきゃいけないのに、腕にも足にも絡み付いて首も絞められて···呼吸が出来なくて目覚めると、ベッドに入って5分もしていない事を知る。戦場でも、戦場から帰ってもずっとそれの繰り返しだ」
「そ、んな···」

淡々と語られる現状に思わず言葉を失った。
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