娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
偽名と呼ぶには余りにもお粗末だが、シャルの幻影魔法付きであれば流石にバレる心配もない。

“それにシャルは今王宮にいる事になってるし、十分よね”

「スティルは何か食べたいものとかあるかしら?」
なんて話ながらシャルの腕を引っ張ると、そのままスルリと掴んだ手を繋がれる。

「リリは転けなくても迷子になりそうだな」

なんて言いながら、私達はそのまま手を繋いで歩き始めた。



『私、シャルといっぱい楽しい事がしたいわ』

それが私のお願いだった。
前線に戻る前に少しでも彼に楽しい思い出と、平和な日常への未練を作って貰いたいという気持ちから出たお願いだったのだが····


“自分でもこんなに浮かれるなんて、こ、これが恋の力なの!?!?”


なんて思わずあわあわしてしまう。
好きと言われたし好きと私も言ったし!
私達はもう·······なん、だろう?

ふとそんな疑問が湧いた。


好きな人に好きと言われて、自分の気持ちも伝えた後は世間一般では恋人というやつになるのだろうが····

“でも、昨日もシャルはお金を払ってったし、私は娼婦で······?”


「リリ、どうかしたか?」
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