娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「あっ、え!?なんでも、なんでもないわ!」

自分たちの関係を考え、そしてせっかくの時間を悩んでなんかいられないと考え直して気持ちを無理やり切り替える。

“時間がないんだもの、楽しまなきゃ絶対損!”

何か全然違う話題にしなくては、と反射的に周りを見渡すと、凱旋パレードを観に行ったときに食べた串屋さんが目に飛び込んできた。


「あっ、この串!シャル、食べない!?貴方の凱旋パレードを観に行ったときに臨時の出店が出てて食べたんだけど、皮がパリッとしてて凄く美味かった···」
「あっ、ちょ!リリス···っ!?」
「「·······あっ」」


お互いハッとした時には既に遅く、会話の単語からそこにいるのが“英雄”じゃないかとその場がざわついた。

幻影魔法は見た目を変えるのではなく周りの人の意識外の存在を別の物に見せる魔法。
つまり、“個人”を“認識”してしまうと解けてしまうもので······


「え、うそ、本物?」
「まさか、本物は今頃王宮なんじゃないか?」
「でも確かにあの顔って···」
「英雄が本物なら、その横にいる女性は誰だ···?」
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