娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

12.きっとこれが帰るべき日常···という言葉で誤魔化されてなるものか

「·····へっ!?」

がしっとシャルの足に抱き着くように、そこには小さな男の子がいて。

「ちょ、まっ、落ち着け!?お、俺は英雄だぞ!?英雄ってのは···その、戦闘しか出来ないんだぞ!?」

言葉だけ聞くと相手を下に見ているようにも聞こえるが、誰よりも言っているシャル本人が一番慌てふためいていて。
しかも足に絡む男の子をオロオロしながら抱き上げつつ言ってるもんだから、なんとも言えない微笑ましい雰囲気がその場に流れる。


「ほ、本当に俺っ、何も出来ないんだが···っ!?」

男の子と目線を合わせ困ったようにそう告げるが、抱き上げられた男の子は猫が、猫がと半泣きで目の前の彼の頭にすがり付く。
そして釣られたのかシャルもあわあわしつつ私にすがるような視線を向けてきて·····

“え、なんか····可愛いとか思うの惚れた欲目ってやつなのかしら?”

なんて思わず癒されるが、今はそんな場合ではない。
周りの人達は泣く子供とオロオロする英雄という微妙な組み合わせに様子見だ。

「ねぇ、猫さんがどこか行っちゃったのかな?」
「ちょっとよそ見したらお外行っちゃったのぉ~っ!!」
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