娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「治癒魔法で睡眠不足からくる不調は問題ない、体としては健康だよ。でも、“寝れない”って思ったより精神にくる。魔法や薬で体を眠らせても悪夢のせいでしんどいだけで···」
「だから、ここに?」
「ダメ元ってヤツだったけどな。強制的に眠っても意味ないなら“自然な形で睡眠に入れたら”何か変わるかもしれないって思ったんだ」


英雄というのは、光の中にいると思っていた。
国中から憧れられて、褒賞も権力も与えられ、手に入らないものなんてないのだと思っていた。
·····のに。

“ーー敵国からしたら虐殺者、か···”

憎悪と畏怖の目を向けられながら戦い続けなければならないという現実を突き付けられ、胸が苦しくなる。

そんな世界に彼はいて、そんな彼のお陰で私達は平和に暮らしているのだ。


No.1のプライドが、なんて全て忘れ、ただただ一時でいいから彼に幸せな夢を見てもらいたい、と思った。が。


「例え本当に私に魔力があってそれで寝かせられたとしても、強制的に魔法で眠らされてるのと同じじゃないの?」
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