娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
さっき彼が言っていたように、“魔法や薬で体を眠らせても悪夢のせいでしんどいだけ”ならば、私が魔力で寝かしつけても意味がないのでは、と思ったのだ。

そう問われた彼は、少し考える素振りはしたものの。

「ーーいや、大丈夫だと思う。相手を強制的に寝かせるというより、悪夢を『上書き』するんだと思う。なんだろ、あんた夢に意識を合わせてないか?」
「夢?確かに私は仕事柄、いい夢見させようと心がけてはいるけど···」

それだな、と一人頷く彼に思わず怪訝な顔を向けてしまう。

「寝かせる魔法じゃなくて、“夢を見せる魔法”なんだよ、相手が寝るのは副産物みたいなもんだ」
「はぁ···」

わかるようなわからないような説明に曖昧な返事をする。
それでも、これで彼が眠れるならいいかと思った。


「とりあえずは、わかりました。それで、魔法ってどうやってかければいいの?」
「えっ」
「そもそも無自覚だったのよ、どうやって寝かせればいいかわからないわ」


指摘されるまで自分に魔力があるなんて思いもしなかったのだ。
どうやって魔法を発動させてたかなんて知るはずもない。
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