娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「必ずリリスのとこに帰ってくるから、また待っててくれるか?」

と聞いてくれた。
その言い回しにハッとして見上げると優しげに微笑んでいるシャルと目が合う。

「来る、じゃなくて帰る?」

思わず聞いてしまった私の質問の意味が一瞬理解出来なかったのか、きょとんとしたシャルだったが、少し考え気付いたようで。

「俺が帰りたいのは娼館じゃなくて、リリスのとこだから」

と、少し染めた頬を隠すようにスイッと横を向きながらそう言ってくれた。


「いってらっしゃい、シャル。気を付けてね、怪我とかしたら許さないんだから」
「あぁ、いってくる」


ーー娼婦である私はいつまでこうやって彼に“いってらっしゃい”を言えるのかしら。


胸に燻るその思いは、伝えることなくそっと胸の奥に仕舞うのだった。
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