娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
もちろん何度かその事実を伝えようとはしたのだが。

『キープするより買い上げた方がお得よ』だなんて、他の誰でもない本人の口から言えるはずもなく。


“だってそんなこと言ったらシャルに私の一生を背負わすことになっちゃう、わよね···?”

もちろん買い上げたからといって必ず責任を取らなくてはならない訳ではないが、相手は他の誰でもないシャルなのだ。
絶対責任を取ろうとするだろう、シャル本人の気持ちを差し置いて。

そう思うとやはり言い出しにくい事この上ない。



「·····忘れるんじゃないよ、あんたは娼婦なんだからね。あんたの意思に関係なく相手が払ったお金に見合ったものを返すんだ」
「えぇ、わかってるわ」

それは娼館の女将として正しい言葉。
娼婦としての“当たり前”。


そして、私が家を出て娼館に来てからずっと今まで育ててくれた第2の母としての優しさ。


“もしいつかシャルが来なくなったとしても、ここが私の家であり仕事場。私は仕事をしただけだから傷つく必要はないって事ね···”

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