娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
女将のそんな気遣いを感じ、思わずくすくすと笑いが込み上げてしまう。


「どうかしたのか?」
「ううん、なんでも!シャルは···その、向こうではどうしてた?怪我はしなかったわよね···?」

見る限り怪我は無さそうだが、それは治癒魔法によるもので実際は怪我をした、なんて事もあるかもしれない。

「大きな怪我とかはなかったかな。魔法騎士の中でも俺は身体強化が得意で、そもそも全身が硬い鎧に守られてるみたいなもんなんだ」

なんてけろっと話すシャルにホッとするが。

「治さなくてもいいくらいの怪我しかしてないから安心してよ」
「いや、それ結局怪我してるんじゃ···?」

と、全然安心できない追加情報を与えられて思わず怪訝な顔になってしまった。

「え!いや本当にかすり傷だったっていうか!」
「でも治して貰って来たのよね?」
「それはまぁ···そうなんだけど···」
「それってつまり、治さなきゃだったって事じゃないの?」

シャルの言い方からして生死をさ迷うような怪我では無いにしても、治さないといけないほどの怪我を想像して思わずズシリと胸が重くなる。
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