娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
女将から提案されたそれはとてつもなく甘く俺の中を巡り、そして絶望へ叩き落とした。



“簡単に死ぬつもりはもうない、生きたい理由も見つけた。しかしそれが、生きて帰れる保証になる訳じゃない···”


俺の命が尽きるまでリリスといれたら、きっとそれがどの瞬間であろうと俺にやすらぎを与えてくれるだろう。

でも、じゃあ、リリスは?
誰がリリスにやすらぎを与え幸せにする?

俺がいつ帰るか、本当に生きて帰れるかわからない屋敷に一人でずっと待たせるのか?


「·······それこそ、耐えられない···」


彼女には誰よりも自由に笑っていて欲しいから。






「·····とか、格好つけたんだろぉ~!?」
「俺ちょっと団長の事嫌いになりました」
「むしろちょっとしか嫌われてないの?俺、喜んじゃうけど」
「·············。」

なんて話をまさか前線ですると誰が思った。
相変わらずすぎる団長に最早ため息も出ない。

そしてこんな気の抜けた会話をしてる癖に中々に状況は劣勢で。


ふぅ、と息を吐き耳を澄ませる。

“不審な足音や近付く魔力はない、な···”

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