娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

16.夢とは儚く消える幻想

ドラゴンや魔物というものは伝説上の···もっと言えば『物語』の世界である。

しかしその『物語』が実現すれば、戦争でヒトが戦わなくてもよくなるのではないかと考えた人がいた。
色々な実験を重ね、魔法をかけたり魔力を込めたりと様々な研究がされ人工的に作られた“魔獣”と呼ばれるその生物は、史上最強で最悪とされる『生物兵器』になった。

しかしその生物兵器は制御が出来ず無差別に殺戮を繰り返し、人類史上最大の禁忌として何十年も前に多大なる犠牲を払い封印されたという。

それがこの国の····いや、この世界の歴史の1つだった。







「リリス、ちょっといいかい」

娼婦という仕事柄朝は遅い。
昼近くに起きた私は一人のそのそと共用キッチンへ向かっていて···女将からそう声をかけられた。

「あら?こんな時間に珍しいわね」

眠気眼を擦りながらそう尋ねるが、いつもの女将の軽口が飛んでこず少しドキリとした。

「話があるから、ちょっとこっちおいで」

なんとなく嫌な予感を覚えつつ女将に着いていくとそこは女将専用の事務室で。

「何かあったの····?」
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