娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
部屋に入りそっと聞くと、女将が深いため息を吐く。

「········あんたをお買い上げ、だ」
「え?」
「こっちが提示した金額よりかなり色を付けた金額を払ってったよ」

買い上げ。
その一言に一瞬ぽかんとし、そして昨日シャルに触れられた右手の人差し指が熱くなった気がした。

「それは···その、相手はもちろん···」
「あぁ、英雄様だよ」

いつか、なんて言ってたのにまさかその“いつか”が“翌日”だなんて誰が思っただろうか。
しかしシャルが私との時間ではなく、私を、買った。
その事実がじわりと胸に広がり、堪らない嬉しさが溢れる。

「そ、うなんだ···。私、本当に····」

娼館を卒業した後は、シャルと共に暮らすことになるのかしら?なんて幸せな想像が一気に駆け巡り、そしていつになく暗い表情の女将に気付く。
そしてこのどことなく暗い雰囲気に違和感を覚えた。

「·····女将、シャルは···?買い上げって事は女将と交渉があったって事よね」

買い上げられ卒業していった先輩達は、皆幸せそうに一緒に娼館を出て行った。
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