娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
昨日のはなんだったの、とか。
夜は眠れているの、とか。
いつ戦場に向かうの、とかも。
私にはもう知る方法が何もないのだ。


そう思うと胸が黒く染まる気がした。
ドロリと重たい霞がかかり、なんだかとても息苦しくて····

それでも涙は一滴も出なかった。


「いっそ泣ければ少しはマシになるのに···」


泣けない事と眠れない事は少し似ているな、と思った。
苦しくて、もがいても意味がなくて、自分ではどうしようもなくて。

“こんな時でもシャルの事を考えて···私、本当にバカみたいだわ”


置いていかれた。捨てられた。
でもどちらの言葉もしっくりこなくて、こんがらがった頭をすっきりさせたくて。

そのまま上掛けを頭まですっぽり被り無理やり目を閉じる。
これから私はどうするべきなのか、どうしたらいいのか····


そして頭まですっぽり上掛けを被ったまま、ごそごそとベッドに座り直す。
ウェディングドレスのベールのように広がった上掛けが昨日の幸せな時間を思い出させ酷く惨めな気分になった。


それでも。


そっと両手を組んで月に向かって頭を下げる。


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