娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

17.賞味期限と消費期限は違うからという主張ほど切ないものはない

娼婦と客。
思えばシャルとの関係はそれだけだった。

そして彼に買い上げられた私はもう娼婦じゃなかった。


娼婦じゃないただの平民が、英雄で貴族の彼との繋がりを持てるはずもなく。


「本当にもう、全部終わっちゃった···」

一夜の夢と言うには長い時間、そして甘い時間を過ごしてしまった。
いい思い出を胸に、明日からも生きる···なんて思えないほど幸せな時間を過ごしてしまった。


“娼婦じゃない私は、本当に空っぽね···”


娼館・ライッツのNo.1だった私ももういない。
娼婦だった私ももういない。
シャルとの未来を夢見た私も、もう····


その事実が胸を締め付け重く苦しく足枷のように絡み付く。

「それでも泣けないなんて、どうかしてるわ」

泣けないどころか笑いすら込み上げてくる。
と、いうか。



「なんか·····腹が立ってきたわね······」

そもそも捨てるならなんで私を買い上げたのよ。
うっかりお金持ちにはなったが、その反面今の私は無職である。

不自由なくどこにでも?
それ、誰目線の幸せなのよ。
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