娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

18.伝説よりも名誉よりも欲しいもの

気持ちを新たに酒屋で働き始めた私だったが。

「全然声がかからないわね···」

買い上げられて娼婦を辞めたとは言え、つい先日までここにいて。
シャルがいない間は酒屋でも走り回ってて。

客からすれば、昨日と今日で何も変わらず私はずっと“ライッツ”にいる。
むしろ買い上げられた事を知らない客がほとんどで、だからいつものように酒屋で働けばまた声をかけられたりすると思っていたのだが。

“どういうことかしら···”

思わず怪訝な顔になるのも仕方ない。
先日まで普通に「ここで飲むかい?」とか「今日もまたリリスは売り切れかぁ、こっそりダメ?」なんて言われていたのに。


「リリス、これは11番テーブル」
「あ、はぁい!」


女将から声をかけられ慌ててお酒とつまみを抱えて11番テーブルに向かう。

「お待たせしました~っ!」
「お、待ってました、ありが·····、あ、ありがとな」
「? えぇ、楽しんでいってね!」
「·····目が、全然笑ってねぇ···!」
「いや、顔も笑ってなかったぞ、リリスってあんな感じだったか···?」
「?」
「ぅおぉ!スゲー上手そうだな、うん!」
「そ、そうだな!!」
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