娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「それを酒屋で10分おきに覗いてみな、話はそれからだよ」

“そのペースで鏡覗いてたら、私完全にナルシストなんだけど····”

なんて思ったものの、ここでは女将の言葉は絶対。
渡された鏡を渋々ポケットに仕舞い、酒屋に出る準備をする為に私は一度自室に戻った。





“なんとかしてお客を取れるようにならないと”

情報が欲しくて気が急くが、酒屋に出ても声をかけられる事がめっきりなくなったのも事実。
女将に指示されたという事もあり気が付く限り鏡を覗き込んだ。

「? もしかしてちょっと表情が硬いかしら」

自分では精一杯にこやかに笑顔を振り撒いているつもりだが、なんだか自分の笑顔に疑問を抱く。
それでも笑えているから、と接客に戻り接客が終わればまた鏡を覗く。
すると鏡の中の自分は····

「あら?表情が硬い、わね···?」

仕事が始まってすぐの時間だからまだ解れてないのかと思ったが、何回覗いても私の表情が強張ったまま解れることはなくて。

「あ、あら?あらら??」

“わ、私ずっとこんな顔して働いてるの!?そりゃ声なんかかからないわよね!?”

こわっ!
自分の顔こっわ!!
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