娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
思わずそんなことを考えショックを受ける。
それと同時に、皆が気まずそうに目を逸らす理由に納得した。

“こ、こんな弊害が出てたなんて···”
そりゃ女将もお客を取らせる気にはならないわね····。

そう思い思わずため息を吐いた。



それでも、ここ最近の不調の理由がわかったのなら対策は取れるはずだ。
そう思い直し気持ちを切り替える。

今まで自然に振る舞い、自然に笑っていたのにそれが今は出来ていない。
なら。

“完璧に笑顔を作ってやるわ、元No.1を舐めないでよね···!”

鏡に向かって口角を上げる。
これじゃダメ。
もっと自然に、もっと妖艶に。

好きな人に大切にされた私自身を思い出すの···!

そう自分に言い聞かせ鏡を見る。
シャルから貰った言葉、一緒に過ごした時間を思い出しそしてシャルに向ける笑顔を想像して。

“結局私の中はシャルばかりなのね”

そう思うと胸の奥がチクリと痛んだ。



ここにいるのはシャル。
そしてそこにいるのもシャル。
そしてそしてあそこにいるのもシャル。


そんなバカなフィルターと暗示をかけて接客をする。
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