娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
痛いところ突くなぁ、なんて苦笑しながら、でもね、と団長様は話を続けた。

「魔獣には知能がない、本能で動くんだ。だからこそそこに勝機がある」
「勝てる···ん、ですか?」
「シャスティールは勝つよ」

そう断言され、思わず胸が苦しくなった。
シャルは勝つ。
根拠のないその言葉にすがりたくて仕方がない。

「問題はその後···ですか?」
「そっちは、正直予測がつかないんだ」

少し伏し目がちにそう告げられ、釣られて私も下を向きそうになり勢いよく上を向く。

「うぉ!?涙をダイナミックに堪えた感じ!?」
「いえ!私なんか泣けないんで!でも、今下を向いたら気持ちまで下向きになりそうだと思っただけです!」

シャルが前を向いているなら私だって前を向く。
“私が勝手に想うのは私の自由だもの”


「え、泣けない···?」

そんな私の行動·····ではなく、涙の部分が気になったらしい団長様にそう問われた。

「あ···はい、なんでか涙が出なくなっちゃって。私のは気持ちの問題だと思うんですが···」

涙が出ない、別に日常生活に支障はない。
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