娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
泣ければ楽になるのに、とは思うけれど···泣けないならばいっそ泣かないと決めたから。

「いいんです、シャルとお揃いみたいですし!」

作った笑顔ではなく、その時は本当に自然に笑顔が溢れた····そんな気がした。

私の顔をぽかんと見た団長様は、私とは反対に少し泣きそうな笑顔をして。


「···あいつを想ってくれてありがとな、出来れば信じてやってくれ。きっと全て終わらせてどんな形になったとしても帰ってくるから」
「ーーーはい、ずっと待ってるって···約束しましたから」




団長様は泊まらずそのままカトレアの部屋を出て、他の娼婦を呼ぶこともなく帰って行った。
私も一緒に部屋を出て酒屋に戻る。


「女将、どんどん接客させて!」
「はいはい、鏡···は、もう要らなそうだね」
「えぇ、元No.1を舐めないでよね!すぐに返り咲いてやるんだからっ」


ーー必ず勝つ、そう団長様は言ってくれた。
それに。

“私が信じないでどうするの”


シャルの戦う場所が前線なら、私の戦う場所はこの娼館。
ここで少しでも貴方に近付いてみせる···!


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