娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる

3.現状“これから”という瞬間が来ないのは幸か不幸か

俺が寝てる間に他の客取ってもいい、なんて言っていたが、なんとなくそんな気にはならず、ぼんやりとシャルの寝顔を眺める。

「······ほんと、綺麗な顔····」


どれくらいの時間そうやって過ごしたのだろうか、暫くして頑なに閉じられていた瞼が少し震えたのに気付く。

“まさか悪夢を····!?”

慌ててシャルの頬を両手で挟み顔を覗き込んだ時、ゆっくりと開かれた彼の瞳と至近距離で目が合った。


「·········何してるんだ?」
「······いや、その、別に·····」

そうか、と呟いたシャルは上半身を起こす。

「夢、どうだった···?」
「悪夢じゃなかった···」

悪夢じゃなかった、という一言にホッとする。
本当に自分に魔法が使えたのか、とか思うところは沢山あったが、それでも目の前の彼を一時でも寝かせられた事に心の底から安堵した。

「····良かった」
「ありがとう、楽になった」
「お役に立てて何よりよ」

花が綻ぶような笑顔を向けられ思わずドキッとした。
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