娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
当然すぐに答えて貰えると思っていたのだが団長様は無言だった。
その事に違和感を覚え、しかし“恋人でもなんでもないただの娼婦に、居場所は教えられないって事もあるわよね”と無理やり納得する。
しかしチラリと視界に入ってきた団長様の表情は相変わらず陰ったままで····


そういえば一番大切な事をまだ確認していなかったと、恐る恐る団長様を見上げた。


「·····シャルは、無事なんですよね?」


団長様はどの質問にも答えてくれなかった。
ただ俯いたまま、小さく首を左右に振る。


「···これを、君に」

カチャ、と金属音を鳴らし渡されたのは、千切れているが私がプレゼントした鎖の通されたあのアーティファクトだった。


どういうことですか?という言葉は喉に張り付いて声にはならなかった。
はくはくと口を動かし、瞬きを忘れてただただ俯く団長様を見上げ·····


ガクッと足の力が抜けたが、崩れ落ちる前にすかさず腕を掴まれ、そのままそっとベッドに座らせてくれた。

“あぁ、彼が私の前にわざわざ立っていたのは倒れた時の為だったのね”
なんてぼんやりする頭の奥でそう思った。

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