娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
どんな形になったとしても帰ってくる、そう団長様は確かに言っていた。
それでも。

「こんな形で、なんて····そんなのって·····」

認めたくなくて、信じたくなくて、行き場のない感情を持て余す。

気付けば窓から明るい光が射し込み、朝になった事を知った。


「お腹、すいたな」

朝は皆に平等に来るし、生きていればお腹は減る。
そんな当たり前の事を何故今まで考えたことがなかったのだろう。
当たり前の日常を当たり前に過ごすその幸せは、こんなに簡単に壊れてしまうというのに。


「シャルの帰ってくる日常はここだってあんなに言ったじゃない···」

サンドイッチを食べて、探偵の真似事なんかして。
噴水でそっと口付けを交わして。

その温もりがもう、どんなに頑張っても戻らないと信じたくなくて。



それでも、まるで枯れたように涙は出なかった。




私とシャルは、娼婦と客だった。
“娼婦”という立場がシャルと私を繋ぐ唯一の存在だった。

さっき朝日が射し込んだのに気付けば外はもう暗くて。
ふらふらとベッドから起き上がり、吸い寄せられるように酒屋へ向かった。

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