娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
お客さんであるその男性は一人ベッドに座って待っていた。


「スワン!来てくれてありがとう」

常連客に微笑みかけながら部屋に入る。

「待ってたよ、リリス」

スワンは近くの鍛冶屋の主人で、必ず私を指名してくれる。
貴族や騎士を優遇したくなる気持ちはわかるが、そういう“一見さん”よりも根強く指名してくれる彼のようなお客さんこそ大切にするべきだというのが私の持論だ。

そしてだからこそ不動のNo.1として君臨していると言ってもいいだろう。
何しろ私のこの記録はデビューしてから一度も破られた事はないのである。


「スワン、今日はどうする?」
「あぁ、今日はいつもより過激な希望があるんだ」
「まぁ、ドキドキしちゃうわ」


··········ちなみにここで1つ、私の秘密を教えよう。


「今日は君に······」
「私に········?」

真剣な表情のスワンに、思わず小さくこくりと唾を飲み込む。


「今日は君に、て、手を!握って欲しいんだ!」
「······················えぇ、お安いご用よ」
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