娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
技なんて本当は何も持っていない処女を拗らせてしまっている自分を。
そんな“アマリリス”を選んでくれたような気がして、心に何か暖かいものがじわりと広がるのを感じた。



「遅かったわね、リリス。そんなに激しい感じだったの?」
いつもなら客より早く部屋を出るのに、今日は彼が出た後少し部屋に残っていたせいで女将さんにそう聞かれた。

「そんなことは····」
ない、と言おうとして、彼と交わした口付けがふと頭を過り思わず赤面してしまう。

“そういえば私、シャルと···!”

そんな私の様子を少し不思議そうに眺めた女将だったが。

「···まぁとりあえず、次のお客さん待ってるから行っとくれ。菖蒲だよ」
「菖蒲ねっ!」

これ以上赤い顔を見られたくなかった私は、次の部屋に思わず小走りで向かうのだった。






次も本当に来てくれるかしら、なんてお客さんに対して思うことではないのはわかっているが、それでもついそう思ってしまうのを止められない。

ーーーもしかしたら社交辞令だったかも、なんて······



·········思う時間なく、あっさりと“その日”はやってきた。

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