娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「ふむ、じゃあその子は?」

馬車の中を確認していた検問官が視線をちらりと私に向ける。
ドキッとして思わず肩が跳ねそうになった。

検問官は私の方をじっと見て回答を待っている。
私は緊張しながら、事前に言われていたようにそっと検問官に向けてただ微笑んだ。


「可愛いだろ?“彼”は次代の英雄候補なんだ。だから急遽現地調査に参加する事になってね」
「は?この女みたいな顔の奴が、次代の英雄候補なのか···!?」
「今代の英雄、シャスティールだって可愛い顔をしていただろう?」
「そう言われれば····?」

“えっ、嘘でしょ、それで納得しちゃうの!?”

ヒヤヒヤし変な汗をかきながらも微笑みを絶やさず団長様と検問官の会話を眺める。

目立たないように、の予定が、目立つ赤い髪こそ帽子に隠したものの···気付けば私は豪華なマントを羽織り、かっちりとした騎士服を着て一番華やかな馬車に乗り込んでいた。

“何が『俺は馬車で目立っちゃおうかな』よ、私もセットで目立つとか聞いてないわよぉ~!!”


「それにしても、次代の英雄···か」

ポツリと呟く検問官に、ツキリと胸が痛む。
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