娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
そんな私の気持ちを察してくれたのか、団長様は「候補、だ。まだ我々は今代の英雄を諦めてはいないからな」とハッキリ言ってくれた。

流石“団長”と思うような、先ほどまでのゆるゆるな空気を一気に重くするその声色に私も検問官もビクリと肩を震わす。

「ま、まぁ理解した、通ってよし」

そのお陰かはわからないが、私も入国許可が下りてホッとした。



「はぁ····通れた·····」
「こんなんどうとでもなるモンだからなぁ!」

うはは、と笑った団長様は馬車内で広げていた書類を適当に端に寄せてしまう。

「あれ、お仕事はいいんですか?」
「カモフラージュだからな、うん」

ニヤリと笑った団長様を見て、確かに馬車で移動する理由がいるものね、と納得しお礼を言おうとした時だった。


「団長!その書類は本当に団長の仕事ですからね!絶対消化してくださいよ!?」

外から叫ぶように騎士様の声が聞こえて····

「····ちっ、ダメか···。シャスティールの馴れ初めとか聞きたかったのに」
とため息を吐いた。


“シャルもこんな風に働いていたのね”
なんて、少し微笑ましく感じたのは内緒である。


< 212 / 308 >

この作品をシェア

pagetop