娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
特別待遇を期待している訳ではないが、冷遇されたい訳でももちろんない。
願う待遇は『普通』だ、ほんと、普通でいいから落ち着ける感じで頼みたい···!


そんな内心の葛藤を見抜いたのか、公爵は朗らかに笑ってくれた。

「お互い全てを水に流して、とはいかないかと思うがこうなった以上しっかり手を取り合いたいと考えている」

そう言って握手を求められ、少しホッとしその手を取った。
の、だが。

「まさかかの有名な英雄が来てくれるとは思わなかったよ、これからの活躍は魔獣に向けて頼みたいな、ははは!」
「あ、はい、そうですね、はは····」

“こっわ!これめちゃくちゃ当て擦られてるよな、朗らかな笑顔でめちゃくちゃ言うじゃん、怖ぁ!”

早くも俺の心は折れそうだった。
しかしそんな俺の心配は杞憂だったのか、俺達の待遇は極めて良かった。

もちろん状況が状況なだけに、豪華な食事が出ることも華美な宿泊所が用意される訳でもなかったが、それは俺が望んだ“普通”だった。

その国の兵と同じ食事を出され、寝泊まりする環境もしっかりとしている。
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