娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「今日も頼みたい」

少し仏頂面で部屋にいた彼は、私がドアを開けると同時にそう言いながら立ち上がった。
近付く彼を見て少し慌てつつ目を閉じる。

“ま、またあのキスをされるのね!?”

なんて、思わず身構えた私に贈られたのは。


「······え?」

そっと、まるで壊れ物かのように少し恐々と抱きしめられた。

「ーーー···その、口付けの前に抱き締めろ、とアドバイスされた」
「あ、うん···」

線が細く見えていたのにこうやって抱き締められるとしっかり筋肉があることを実感する。

“当たり前だ、だって彼は英雄なんだから”

力一杯抱き締められたらきっと骨なんて簡単に折れるだろうに、いや、だからこそ···まるで雲を抱くかのように腕を回され、思わず目の前の彼の胸に頭を委ねてしまった。

「ーーーッ!」

そんな私に驚いたのか、シャルはビクッとして···

「いい感じに眠たくなってきた···!あんたの推測正しいみたいだ、心拍数や体温の上昇に合わせて俺の眠気が誘われている!!発動トリガーは“ドキドキする事”で間違いなさそうだっ」
「···············そう」
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