娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
浮かした瓦礫の隙間に飛び込み、邪魔な瓦礫を弾きながら感知に引っ掛かった部分を一気に退かして。


「生きててくれて、良かった····」
“エトからこれ以上奪わなくて良かった”と心の底から安堵する。

瓦礫からおばあさんと、母親だろうか?若い女性に幼い女の子を抱えて這い出るとエトが泣きながら駆け寄ってきた。

「·····エト、どこか寝かせられる場所はあるか?治療しなくちゃいけない」
「······こっち」

案内された場所に寝かせ、治癒魔法をかける。

「俺は治癒魔法は得意じゃないんだ、応急措置程度にしかならないから、後で得意な奴を連れてきてもいいか?その、エトからしたら殺したい相手かもしれないが···」
「······なんで」
「あ、いや、俺の同僚だからさ」
「そうじゃなくて、なんで···助けてくれたんだ」

なんで、と言われてぽかんとした。
なんで?なんでって、なんでだ?

「だって、戦争は終わっただろう···?」

俺は兵器だ。
命令されれば殺しもする。
だがそれは“俺が殺したいから”じゃない。

「俺は····俺だって。誰も殺したくなんか、死なせたくなんかなかったよ」
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