娼館の人気No.1はハジメテの夜を夢見てる
「なっ!?」

ポツリと溢れた本音にエトがぎょっとした顔をして、溢れたのは本音だけでなく涙もだったと気付く。

「な、泣くなよ、大人だろ···!?そ、それとも傷が痛むのか!?」

違う、痛むのは心だ。
罪悪感から、殺しの恐怖から、殺される恐怖から寝られなくなるくらい俺は蝕まれていて。

「いや·····悪い、泣くつもりなんて···」

“格好悪いな、リリスがこの場にいなくて良かった”なんて頭の奥で考えた。

「それで、連れてきてもいいか?」
そう泣きながら聞くと、ギクシャクしながら小さく頷いてくれた。


仲間を呼びに施設に帰ると瓦礫で汚れ、血を流したその姿に皆ギョッとして。

「あ、暗殺されたか!?」
「いや、ごめん生きてるわ···俺····」

なんて間抜けな会話をした。
そのまま急いでエトの所に戻り、いつも俺に治癒魔法をかけてくれる騎士に治療を頼み、他のメンバーで壊れた瓦礫を退かした。


「流石に俺達で建物は直せないから」と説明し、野営で使うテントを張る。

「討伐作戦が終われば俺達はみんないなくなるから、その後今俺達が使わせて貰っている施設に住めないか公爵に聞いておくよ」
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